8:38 《現在地》
さあ始まった!
大千代港、二度目の挑戦。
そして、これが今回の渡島における最後の機会だ。
地形図には全く書かれていないが、航空写真にはっきりと【写っている】、この“第二のルート”。
入口に1時間以上も停車している軽バンの主は、きっとこの道を下って海岸へ向ったと思われる。
侮ってはいけないが、普通の島民が歩いて行った道なら、そう酷いことにはなっていないと思いたい。
航空写真にも下の方の道は写っていないし、地形も間違いなく険しいだろうし…などと、いろいろ不安なことはあるのだが、もう無駄な逡巡に費やす時間もあまりない。
弱い気持ちには出来るだけフタをして、物理的に問題がないと思えるところは、ズンズン進もう!
そんな心持ちでスタートした私であった。
写真は、入口から50mほどの地点だ。
明らかに車が通るような道ではないが、登山道だと思えば全く不満は感じない、良い道だ。
再び海抜230m付近から、0mを目指すことになる。
先に挑戦した旧村道からは、直線距離にして2〜300mしか離れていない場所を下って行くわけだから、地形的な特徴も似ているようである。
ようするに、海抜100m辺りまでは濃い密度で草や灌木が茂る急斜面であり、その下は切り立った海食崖ということである。
旧村道は灌木帯をひたすらの九十九折りで下っていたようであったが、その大部分は大崩壊に呑まれてしまっていた。
“第二のルート”も同様の九十九折りの連続であるが、幸いこちらには崩壊の魔の手が伸びておらず、安心して通ることができた。
ちなみに写真は入口から100mほどの地点にある、2回目の切り返しだ。
さらに進んで、入口から150m付近。ここで3度目の切り返し。
GPSでこまめに現在地を見ているが、まだ比較的等高線が疎らなエリアにおり、海抜200mの高度を保っている。
全体的な斜面の傾斜も旧村道が下っている一帯(=大千代港直上)よりは緩やかなようで、旧村道周りでは見られなかった樹木もちらほらと。
そのため緑陰を下るようなシーンもあり、海へ向いつつも、今のところの気分は山歩きに近い。
このまま、「あれっ?」と思うくらい呆気なく海岸線に下れたりしたら、言うことないんだけど、実際そんな期待は持てず、なかなか本気を出して下って行かないことに逆にもどかしさを感じた。出来れば均等のペースで下って欲しいぜ。これだと後でしわ寄せが来るんじゃないかな……。
8:42 《現在地》
早いペースで3度目までの切り返しを過ぎたが、続く4度目が遠かった。
背丈より高い藪に囲まれていて先の展開が全く見えない状態のまま、南向きの進行が続いた。
そして入口から推定200mを過ぎた辺りで、小さな広場に着いたのだった。
一瞬、道がなくなってしまったのか焦ったが、よく見ると広場の反対側に2本の異形鉄筋が門柱のように立っており、それらの間に奥へと続く踏み跡が伸びていた。しかし、明らかにいままでよりも“悪そう”だ。
そもそもここに門がある理由だが、獣よけだと思う。門柱の両側に有刺鉄線が張られており、左の門柱とセットになっている白く塗られた有刺鉄線付きの木材を、右の門柱まで引き戸のように動かすことで、完全に閉鎖する造りになっていた。これまでの道沿いに畑や樹園は見られなかったが、この先にあるのだろうか。ここまでの道が良かった(バイクくらいは通れそう)のも、農作業の往来が頻繁だった証しのように思える。
強烈な海風に晒されることから高木は全く生えていないと思っていた外輪山外側の斜面だが、ここにはわずかながら森といえるレベルにまで育った木々があった。
そのせいで本格的に風も遮られていて、まどろむような穏やかさだ。小鳥の声もひときわ鮮明に方々から聞こえる。多分、野鳥好きの人なら小躍りするくらいな場所だと思う。
ちなみに航空写真で見る現在地はこの辺りである。
しかし、人気(ひとけ)は全く感じられないな…。
ここに畑や樹園があったとしても、それはだいぶ昔のことなのかも知れない。
でも、いまの私にとって、それは吉報と呼べた。
“軽バンの主”の姿がここに見られない以上、やはり当初からの私の期待通り、大千代港かその近くの海岸へ向ったと思えるからだ。
まだ見ぬ主と出会うその場所が、私の再度の断念地点となる危険性は、決して少なくないと思っていた。
100m足らずで束の間の森を抜けると、ふたたび見慣れた高密度の笹藪地帯へ。
そして間もなく、再度の有刺鉄線バリアが現れた(赤矢印のところに異形鉄筋あり)。
やはり、先ほどのバリアからここまでの区間には、獣害を避けるべき何かがかつてあったのだと思う。しかし、油断すればたちまち転げ落ちてしまいそうな斜面であり、このような場所で仕事をすることは、考えるだけで腿が痛む…。
気付けば、道の様子もだいぶ様変わりしてきていた。
まず、路上の踏み跡が目に見えて薄くなった。これは往来が減ったからなのか、周囲の藪が旺盛になったからなのかは、分からない。
それともう一つ、勾配が明らかにキツくなっている。
道の向こうの海面の見え方からも、勾配が伝わるのではないだろうか。まさに落ち込んでいく感じである。
「これも下る分には楽だ」などとは言ってられないくらいに、いまの私は足の力が弱っており、毎歩踏ん張るのが辛かった。油断すると転びそう。下りなのに嫌な汗が出る。せめていまだけは、登りの苦痛を予想するのは止めよう……。
8:43 《現在地》
下り初めてから6分経過、推定300mほど進んだところで、久々に切り返しのカーブが見えて来た。4度目の切り返しだ。
すぐさまGPSを確認すると、海抜は160mまで下っていた。
入口から約70m下っており、残り3分の2といったところ。まずは順調と言えるだろう。
旧村道の方も、あの大崩壊さえ起こらなければ、これと同じような道だったのだろうかなどと考えた(しかもあちらは舗装されていた)。全ては想像の範疇を出ないが…。
それにしても、この辺りに来て海風で耳朶を冷たくしていると、孤独感が半端ない。
島を取り囲む巨大な外輪山は、村民や島の財を護る天然の防壁のようであり、そんな安全圏の外側にある海食崖は、禁足の領域を思わせる。
この島には人が住んでいても、ここに来てしまえば、一人の味方も見届けてくれる人もいないような気がしてくるのだ。
(……“軽バンの主”よ、いずこへ……)
うあ〜… 海食崖が見えて来た!
いま見えている辺りの海岸は、多分この道が下って行く場所よりも北側であり、
あの岩崖が私の前に立ちはだかる訳ではないと思うが、
それでも恐い!
この道の先にも、同様の険悪が待ち受けている可能性は高い(航空写真を見る限りはほぼ確定的)ことを思えば、
とても他人事のようには言ってられない。 恐いよ〜。そろそろ、始まっちゃった感じだなー。
急に周囲の藪が愛しく思えてきたよ。この草付きが最後まで続いてくれたら、良いのにな。
いまはまだ私の周りにいてくれる藪だけど、本格的な海食崖に入ったらいなくなっちゃうんだろうなぁ…。
もう、未来はこの道に委ねているから、なるようになるしかないが。
あらっ? これは意外!
5度目の切り返しを終えた直後だったと記憶しているが、路面に階段が刻まれていた。
意外だったのは、その階段がその辺の自然公園などにありそうな、茶色の擬木コンクリート製だったことだ。
勝手に、気分は生きるか死ぬかの世界へと入り込んでいた私にとって、これは少しホッと出来る遭遇だった。
……そうだよ。
そうだ!
この美しい島の海を観光客にも自由に散策させない道理があるか。
きっとこの道は、看板こそなかったけれど、遊歩道か何かだったことがあるんじゃないか?
考えてみれば、村道からここまでには特に危ないところもなかったし、疲労が濃くて、しかも後がない私が、勝手にドキドキビクビクしていただけって気がするじゃあないか。
だから…
裏切るなよな…! タノムカラナ…。
裏切るなよー!(懇願)
なんか、もう不安しかないんだけど…。
道全体が海の方へ向って傾斜していて、踏み跡も薄いし…、
なんというか、心の弱った者から順に呑み込まれていく死の回廊を行くような気分になるのである…。
擬木コンクリートの階段の“応援力”は、敢えなく真の怖さの前に萎縮してしまった感ある。
そして…
この後でまた2回ほど、小刻みに切り返したような記憶があるが、写真を撮ってなくて記憶が曖昧だ、
私が鮮明に記憶しているシーンは――
!!!
……お、終わった?!
終わっちまったのか……。
終わってないッ!
一瞬マジで終わりを覚悟したが、道はギリッギリのぎりぎりで海食崖の絶望の縁を右に躱し、草の影へ回り込んでいた!
ここにも片足を地獄へ突っ込んだ擬木コンクリートの階段がへばり付いていた。明日には海に落ちてそう…。
そしてその階段の先には、どこかで見覚えのある単管パイプの手摺りが見える!!
どどどどうなってるんだ?! この先!
今日これまででも多分一番緊張しながら、もつれそうな足を慎重に運んで、手摺りの在処まで下った。
8:49
あはははははッ!
見ろ!“空中階段”だ。
なんなんだこの島。
海岸へ下りるって、ここまでしなけりゃならないような特別なことだったか?
でも、“軽バンの主”もここを下っていったんだろうな! …たぶん。
行っても良い? いや、行くしか、ないんだよな!
下り初めて12分、距離は推定350m。
GPSを確認すると、現在地は左図の通りで、海抜110m付近まで達していた。
あれよあれよのうちに、先に行った旧村道での下降記録にほぼ匹敵する高度まできていたのである!
だが、地形図上でもこれより下は、海岸線まで落差100mの強烈な崖が、わずかな間隙も見せずに居並んでいる。
これが万人の大千代港接近を阻む最大の難関であることは、もはや疑いようのない事実だった。
例の航空写真上に、推定される現在地を表示したのが、右図だ。
まさに、絶望的という言葉しか出てこなさそうな地形に、私は邂逅している。
このレポートの導入回で、青ヶ島の海食崖は地形図上でも南アルプスの高山に匹敵するほどに険しい地形として描かれていると述べたが、実態としてもそれに近いものがあると思う。
この航空写真を見ながらいろいろな計画を練った出発前の段階でも、この先の道がどうなっているのか分からず、こればかりは行き当たりばったりでやるしかないと覚悟を決めていたのであるが、よもや…
空中に階段が架かっていようとは!
さすがに、沢山の道を見てきたつもりの私も、予想していなかった。
だが、この空中階段が健在なものであるとすれば、こんなに心強いものはない!
恐怖の崖にかじりついて命をすり減らす必要がないのだから!
これは、今度こそ本当に――
大千代港到達の可能性が!!
そしてここで、第二のルートに入って以来初めて、大千代港の姿を捉えた!
光の海に停泊する空母のような港の姿は、神々しいまでの美しさだった。
これを目に焼き付ける瞬間の私は、笑いながらに恐怖していた。
なぜなら、“空中階段”の登場によって一気に達成の確率が高まった海岸線への到達が、
必ずしも大千代港への到達まで確約するものではないことが、理解させられたからだ。
海岸線の岩場には、未だ視界の届かない領域があり、それが思いのほかに長かった。
見えない部分の海岸線にも歩行できる余地があると考えていたが、
もしも潮汐や高波のために不可能になれば、このルートも徒労に終わることになる。
……いまここで考えていても仕方ない! 行ってみれば分かることだ!!
結局埠頭には人影が見えないことも不安だったが――
行くしかない!
この階段、高所恐怖症の人にはおそらく耐えられないものだろう。
治山工事現場などでよく見る仮設階段のような造りであり、日常的にそれらを多く利用する職業の者以外にとっては、不慣れさからつい二の足を踏んでしまいそうになる。
鉄製なので頑丈さには信頼を置けると思うが、そのことと怖いと感じる心情は、別のものである。
また、階段自体の固定が万全であるかどうかも自分では確かめられないわけで、それも怖さに繋がった。
一人分の幅しかない階段が、桟橋のように完全に空中に張り出した状態で、電光形に2度ほど切り返しながら、ほぼ真下へ向って下る。
足場の多くは透けているため、嫌でもその場当たり的でツギハギチックな構造や、高さを意識させられるのだ。
私は、高いところにはそれなりに慣れているつもりだが、それでも最初は怖かった。
だが、先行する“軽バンの主”の姿が未だに見えない以上、今日もこの階段は無事に人を通したはずだと考えて、意を決し踏み込んだ。
タンタンタンと、金属階段特有の小気味良い音を奏でながら、最初の切り返し辺りまで10mほど下ると、変な揺れ方などがなかったという“足”応えに信頼感が湧いてきて、当初の怖さは幾分緩んだ。
だが、最初の踊り場(階段の向きがここで反転する。もちろん、地上ではなく完全な空中にある)から、いま下りてきた階段を振り返ると(←)、その目の錯覚とは思えない“傾き方”に、改めて引き攣っらざるを得なかった。
傾くなら、せめて反対側に傾いて欲しい! この方向は嫌すぎるだろ!
幾分はカメラを構える私も傾いている可能性もあるが、とりあえず電子水準器がレベルを示す状態で撮影したはずなので、ヤバいですこれ…。
……やっぱり、この階段は怖い。
タンタンタンタン…
…タンタンタンタン
タンタンタンタン…
…タンタンタンタン
スタッ!
あまり長居すべきではない不穏を感じ、そそくさと全て下った。
それにしても不思議なのは、誰が、いつ、どのような目的で、この階段を作ったのかである。
これだけの材料を運び込むことも、空中に桟橋状の階段を構築することも、素人が一人で成し遂げられる限度を越えている。専門の手によると考えるのが自然だろう。
また、途中で見た擬木コンクリートの階段と印象が噛み合わないことも気になる。
もしかしたら、擬木コンクリート階段の世代の道は既に崩壊し、代わりにこの階段が作られたのかもしれない。
このことを考えるうえでは、先に探索した大千代港直上の崩壊した旧村道沿いでも、崩壊箇所を迂回するように、これとよく似た造りの階段が存在していた事実を無視できない。
なぜかあちらは海抜100mより上で途絶えていたが…。
私はこの2日間で島の各所で同じような階段を見たというわけではなく、大千代港に近いこの2箇所だけで見ているのだ。(くまなく見て回ったわけではないが…)
こうなるとやはり、この二つの階段通路は、村道の崩壊によって行われた復旧工事や調査のために、同時期に生み出されたものではないか――という仮説が成り立つ。
仮説に仮説を重ねるのは危険だが、こうも考えられる。
先に旧村道沿いの仮設階段を作ったか作ろうとしたが、途上で大崩壊に呑み込まれたために断念し、改めて少し離れたこの場所に海岸へ下る通路を敷設したのではないか。
そして、現状では大千代港へ通じる唯一の通路になっているのではないか――と。
最後の一行には、私の希望も入っているが……。
8:51 《現在地》
見よ! これが、私が初めて辿り着いた、海抜100mより下の世界だ。
この先がどうなっているかはまだ分からないが、海岸までの最大の難関は越えたような気がした。
GPSの画面上では、階段に入る前とほとんど位置が変わっておらず、標高の変化もよく分からないが、単純にいま下った高度を考えれば、海抜100mを割っているはずだ。
旧村道では、この高さまで下ることが最後まで叶わなかったが、こちらの“空中階段”が、まさに起死回生の一撃となった。
それにしても、昨日から今まで島の中をいろいろと動き回ってみたが、上陸以来この高度まで下がったのは初めてのことかも知れない。
カルデラ内の池之沢も、村落がある岡部も、それらと三宝港を結ぶ都道も、そのほとんどが100mよりも高い、ようするに海食崖の縁より上部にある。
この島は海岸に取り囲まれているにもかかわらず、海岸は遠い存在のように振る舞っている。
海と暮らしの間に、常に崖が立ちはだかって邪魔するのだ。
破天荒な“空中階段”は一度きりだったが、その後も急傾斜の金属階段が断続的に出現し、進路を確かなものとして示してくれた。
これから行く道にも、沢山の階段が整然とは言いがたい配置で並んでいるのが見える。
もとからある地形には極力手を加えず、その比較的に緩い場所を縫うように、巧みに階段通路が作設されていた。
この島での道のあり方として、我を強くしても成功しないという反省だろうか。
それはともかく、巨大な地形のただ中に蟻の行列のようなささやかな道が、しかし確かな熱――意思――を持って続いているのは、とても頼もしかった。
ここまで来れば、今度こそ! 今度こそは海岸に辿り着けると確信した!
っしゃあああッ!!!
なんかまだ、心の中には3割くらいも信じられない気持ちがあるのだが、
今度こそ本当に、海岸に下ることに成功するようだ。
もう分かったと言われるかも知れないが、それでも何度も言いたい!
今度こそ、海岸だ。
決してこれは、過保護ではない。
写真だと、スケールや遠近感が分かりづらいから、勘違いされるかも知れないが、
この段階でも、まだ海岸までは30m以上の落差があり(あとで出すが、下から撮影した写真を見るとよく分かるはず)
しかも相当に傾斜がキツいので、階段がなければ、どうやって下ろうかと思案するレベルだ。
下れないことはないにしても、滑落する危険が少なくない。
だから、この階段には最後まで大いに助けられた!
ここまで来れば、これはもう波打ち際か?
いや、まだ違う。まだ10m以上落差がある。転げ落ちたらただで済まない。
それを錯覚するのは、普通に想像するよりも波打ち際にある岩が大きいのである。
そして、波も大きい。自然界に属する全てが、なんか大きい!
対して、その目的を遂に果たし終えようとしている道は、なんだかとっ散らかっている。
おそらくだが、高波と強風が悪さをするのだろう。荒海のただ中に浮かぶこの島において、
たった10mの高度は海の支配域であり、人が安心していられる領域ではないようだ。
8:55 《現在地》
よし! 海岸線に到着!
さすがに、これ以上波打ち際まで近づく必要もないので、下降はこれで終わりとする。
道らしき形跡も、ここで完全に荒磯に消えた。
ここが、青ヶ島の海抜ほぼ0メートル、海陸の境界線だ。
結局、この“第二のルートは、軽バンの地点から230mの落差を、
おおよそ550mの道のりで下りきっており、それを私は18分かけて踏破した。
全ては道のあったお陰である。道は偉大だ。
きっと惚れるぞ! この道に!
↓↓↓
下から見ると、コレである!
私が最後の階段を下りながら、まだ高い、まだ高いと、繰り返していた理由が分かるだろう!
このスケール感、マジで惚れた。道のあるこの景色に、惚れ込んだ!!
当初は私も、この道など大千代港へ辿り着くための体の良い抜け道くらいにしか考えていなかったが、
環境に立ち向かって人を助ける道に、大小の貴賤などないのだと教えられるような、胸の熱くなる眺めだった。
不可能を可能にするのが、道だ。
道がなければ、この海岸に私は絶対に辿り着けなかった。
そして、この先の世界へ挑む機会も得られなかった。感謝する!
そして遂に、
軽バンの主
偉大なる先行者を――
発見!!
一本釣神帝かよ!! 格好良すぎんだろ!!!
俺がもし釣り人なら、ここで釣ってる自分の写真を撮って飾りたいと思うかも知れない。
格好よすぎて、その辺にテレビカメラが隠れてるのかと思っちゃうほど。
彼は私の接近には気付いたようだったが、何事もなさげに海へ向き直った。
私も声をかけるのは無粋な気がして、それ以上近づかなかった。
彼が島民なのか島外の釣り客かは分からないが、いずれにしても慣れているのだろう。
ここでの釣りは、いざ釣ってもその魚を陸に持ち帰ることが大変な重労働である。
自ずから釣りすぎることができないという、海に優しい釣り場だ。人に厳しい。
ハッ! 我に返る。
道と、人に、見惚れていたが、我に返る。
道は目的を果たし、主も目的を果たしたが、私はまだ達成していなかった。
8:56
進路反転!
大千代港陸路到達の最終段階となる、海岸線歩行フェーズへと移行する!
あと、推定250m。
成るか到達! 次回、決着。
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