2009/1/24 13:45
現在地は仮称「亀ノ甲峠」で、残距離は5.2kmほどだと前回の最後に示した。
そして、いくら私の下調べが甘いとはいえ、そのうちのラスト1.6kmほどは「廃道でない」事を知っていた。
そこには飯田線旧線を車道用に転用したという「夏焼隧道」があって、夏焼という集落の唯一のアクセスルートになっているらしいという事前知識を得ていたのだ。
すなわち、どんなに長くても、廃道はあと3.6kmほどだということになる。
逆にこれまで辿った距離は約13kmに及ぶが、このうち今のような廃道であったのは約4km。
すこぶる長いようでいて、距離としてはたいしたことがないような感じもする。それにも関わらず4kmで3時間も架かってしまったのは、自転車の故障も無関係ではないが、何よりも自転車が荷物としてしか機能しない道路状況の悪さに起因する。
近年まで県道として車を通していた事が疑わしいほどに多数の瓦礫を抱えた、満身創痍の廃県道288号。
既にその山場は越えているものと、そう信じたい午後2時前の私であった。(当初予定を大幅に超過していた)
特に湖底が広く露出しているのは対岸側で、そこにはこの写真に写っているような、何とも不思議な円形の陥没痕が散在していた。
地質学者ならば「これは○○現象だ」と明快な答えを出してくれそうだが、私にはただ妖しげな「マッドポケット」である。
そして、そのまま支線を此岸の直下に持ってくると…
……。
思わせぶりに大きめな写真も…。
駄目。
今回も駄目。
全然廃線跡らしきものは見えない。
或いはここは隧道である可能性もあるが、前後にもそれらしい物は見えず…。
こんなに水位が下がっていても、それでも現れないのか……。
正直、落胆の度合は深い。
13:57 【七本目の橋】
通算で7本目となる橋が現れた。(写真は振り返って撮影)
今度の橋も、一見してはその存在に気付きづらい小さな桟橋で、親柱や銘板は存在しない模様。
しかしかなり高い橋だ。
また、橋の前後はひどく落石が積もっていて、そのせいで事前の橋の存在を察知できなかったと言った方が正しい。
橋の欄干のアップ。
元々さして存在感のある欄干ではないが、大量の落石によって押し潰され、中の鉄筋で辛うじて保っている状態だ。
こういった定置の静物までことごとく破壊されている状況が、もはやこの道の復旧は永劫に無いと訴えているようだ。
橋から5分後。
相変わらずの状況でたいした距離は進めていないが、地形図からは存在を予期しなかった掘り割りが現れた。
本当に岩山を削っただけの荒削りな道路である。
今さら多少の崩壊の場面では驚かないが、どうやって支えられているのかが謎なくらい中空に張り出した大岩が、ひとり私の目を引いた。
だが、基本的に頭上に視線を泳がせていられるのは、そこに立ち止まって時間を浪費している時だけで、進むときにはとにかく足元である。
そうでなければ転倒しかねない。
あと3kmほどで廃道は終わりになるはず。
にもかかわらず、依然として道路状況には少しも改善したところが見られない。
廃道になってからはキロあたり1時間に近いようなノロノロペースなので、ちょっと不安も出てくる。
まさか日没までに脱出できないと言うことはないと思うが…。
この時期は、午後5時を過ぎればかなり暗くなる。
これまでずっと地面に注目して歩いてきた割にはほとんど見かけなかった「ゴミ」。
それがこの場所で何個かまとまって発見された。
しかも、その一つは初めて見る缶だった。
いかにも“ジュース風”だが、裏面を見るとサントリーのビールだという。
私はアルコール系にはとことん疎いので、全くピンと来ないが、これだけインパクトのあるデザインである。多分ご存じの方もいるだろう。(どういうコンセプトのビールなんだ?)
14:06 【現在地:謎の遺構】
久々のまとまった杉林だ。
さすがに杉林の中に「どうにもならないような崩壊箇所」がある可能性は低そうで、ちょっと気楽になる場面。
しかも、なにやら路肩に見たことのない「遺構」がある模様。
結局この遺構の正体は分からなかったが、
ここで湖面を見ると…
…近い。
近いうえに、下は入り江のようになっているらしく、すっかり水が引いて白い河原が見えている。
飯田線旧線…
これまで、湖畔へ実際に下りて確かめることは一度もしていないが、この杉林を上り下りすれば容易に近づくことが出来そうである。
たとえまだ湖底にあって何も見付けられないにしても、その事を確認することも意味はあるだろう。
よし、下りてみよう!
ぅあ!!
うわぁーーー!!
つ、つにい出た!!
つにい? ついに!!
もう言い逃れは出来ない! どう見てもこれは隧道だァー!
やっとである。
いままで既に5時間も並走しながら、ようやくその姿を見せてくれた飯田線旧線跡。
思わず浮かれてしまったが、この興奮は並ではない。
しかも、これはいつ来ても見られる場面ではないはず。
この低水位でなければ、見られない光景。
そして、いま“出てきたモノ”と水面の比高を見る限り、これが今回の水位で確認できる、最も南側の遺構だろうと思った。
…が。
さらに視線を南(左、下流方向)に向けると…
…やべぇよ…。
いきなり楽園だよ……。
湖畔に下りてみたらばさ、いきなり楽園…!
隧道が、左右に2本現れやがッた!
まままずは、
この一番近くの隧道へ行ってみようか…!